第7回 何でもあり精神の音楽
「インフレイテッド ティア(溢れ出る涙)」 by ローランド・カーク

さて、皆さん!

ジャズの帝王、マイルス・デイヴィスがこんな言葉を残しています。

「問題はツールではなくその使い方だ」
ひときわクリエイティブなミュージシャンだけに、説得力のある言葉です。テクニックを磨くということのほかに、いかにオリジナリティーを発揮するかが大事という意味合いもあると思います。
ブラックミュージックが広がり進化し、なおかつ現在のポピュラー音楽に多大な影響を与えているという事実は、ブラックミュージック自体が実に創造性豊かな音楽であったかと言うことを物語っています。

今回は、そんな中でもとりわけすごい人をご紹介します。曲をどうぞ。


首からいろいろなものをぶら下げた男が出てきます。彼がローランド・カークです。最初はなにやら大道芸でも始まるかと思われるかもしれません。^^;
しかし、鳴りだす音に純粋に耳を傾けると迫力はある、哀切感はある、そしてユーモラスな面も感じさせます。
「複数の人間で演奏したら、こうならないのか」と問われると明確に回答出来ませんが、一斉に音が出た時の厚みや勢いには、独特のものを感じます。
彼は、単なる変わりもの(^^;)というわけではなく、ソウルの名曲やジャズの古典にも彼なりの解釈を見せる素晴らしいミュージシャンなのです。
1人1楽器という常識にとらわれない発想はかなり独特です。なんでもありという精神の自由さが、クリエイティビティを生みだすのです。
 
ブラックミュージックの歴史の中には、他にも、ドラム、ギター、ハーモニカ、歌を一人でやる“ワンマン・バンド”形式のブルース・マンがいます(ドクター・ロス、ジョー・ヒル・ルイス)。
 ティナ・ターナーの元旦那、アイク・ターナーは昔、壊れたアンプをあえて使い、当時無かったファズ・トーン(割れたような音)を出すことを思いついたそうです。
楽器を持たない者同士が街角に集まり、無伴奏でコーラスをしていたのが、ドゥーワップのハシリだと聞いたこともあります。
ヒップホップのミュージシャンがレコードを手で回して、新たなサウンドを創るのもすごい発想です。
喋り言葉を音楽に乗せるラップは、子供たちが悪口を言い合う遊びにルーツがあると言われています。お前の母ちゃん、出べそみたいなもんでしょうか。

なんでもありの精神がブラックミュージックを発展させていきました。
自分の感性を信じること、マイルスが言いたかったのはそれだと思います。

それでは、また!
 
アイク・ターナーのロケット88をどうぞ。
サックス奏者のジャッキー・ブレンストンと作った曲で
ロックンロールの元祖とも言われます。