第3回 継承し変化する音楽 
「 ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」by  サム・クック

さて、皆さん。

かつて

アメリカにリロイ・ジョーンズという人がいました。黒人音楽にも造詣が深い作家でした。彼が黒人音楽の特色をこう表現しています。
「変わりゆく変わらぬもの(changing same)」。
ずっと変わらず保ち続ける部分と、大胆に変化していく部分の両面があるという意味にとらえるとよいでしょう。



それでは今回の曲を聴いてください。




伸びやかな声が爽快ですね。でもどこか哀しげでもあります。

サム・クックは、ゴスペルの名門グループから独立し、世俗的な音楽の道へ進みました。彼の音楽はソウルとよばれるジャンルに発展していきますが、当時のゴスペル界からの風当たりは強かったようです。

ゴスペルというのは、アメリカに連れてこられたアフリカ人が、宗教や言葉を剥奪された中で、キリスト教と出会い、その黒人教会で生みだした音楽ジャンルです。元が宗教音楽ですので、大衆音楽がテーマにする色恋などはなく、世俗とは離れた品行方正さを持っていました。

当時、ゴスペル界から、非難をあびたサム・クックは、ゴスペルを捨ててしまった訳ではないと思います。どこか哀愁を帯びたメロディーはまぎれもなく黒人の魂を元にして、そのゴスペルの魅力をポピュラー化し、新しいタイプの音楽(特に唱法)に結実させたといえるのだと思います。


ウォウウォウウォウと言ったコブシを効かせた歌い方、シャウト時の熱量、力みはないが力感がある歌い口。ゴスペルからソウルミュージックが生まれた瞬間です。
ソウルは魂という意味です。黒人の魂という意味が込められているのです。これぞ「変わりゆく変わらぬもの」そして「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム(変化はやってくる)」とも言えます。


 
サムの後に続き素晴らしいソウル・シンガーが続々登場するのですが、ほとんど皆、特に男性はサムの影響下にあると言っても過言ではないでしょう。
皆さんもよくご存知の有名な盲目のピアニスト、レイ・チャールズと、ゲロッパ!のジェイムス・ブラウンもソウル界の巨人です。JBの愛称で呼ばれるジェイムスブラウンは、ファンキー感覚(型にはまらないくだけた感じ)、レイはゴスペル+ブルース+ジャズでギラギラしたサウンド(俗に言うグリッティーな感覚)を生み出したと言われます。
当時のゴスペル界ならば、サムよりも、レイやJBのソウルの方が、さらに「罪深い」というのかもしれません。しかし、ブラックミュージックは古いものも大事にしながら新しいサウンドへとどんどん進化し続けるのです。



それでは、また!
 
 
教会でのゴスペルはこんな感じ。
映画「天使にラブソングを2」から「Oh Happy Day」



教会音楽から、音楽のジャンルとして確立したゴスペル。
こちらはサムがもと所属していたゴスペルグループ・スターラーズです。
これに続くプラターズなどのロックの黎明期もすでに感じる曲調です。